わからない!
日本語で「0」は「零」であり「れい」と読むのが正しいし、英語で「0」は「Zero」であり「ゼロ」と読むのが正しいと思う。それなのに、どうして東京の市外局番は「ゼロさん」で、日本テレコムは「ゼロゼロよんいち」「ゼロゼロはちはち」なのだろうか。紙のサイズは何故「エーさん」や「エーよん」や「ビーご」なのだろうか。
 
さらにわからない!
長身の女性は小柄な女性に憧れ、小柄な女性は長身の女性に憧れ、背の低い男性は背の高い男性に憧れるのに、どうして背の高い男性は背の低い男性に憧れないのだろうか。
 
もっとわからない!
自分より背の高い男性と向かい合っても決して気圧されたりしないのに、自分と背の高さが拮抗している女性と向きあうと、どうして!押されるような「気」の力を感じ思わず直立のまま後ろに倒れそうになるのだろうか……私の場合。
 

Apple Computer の CEO(最高経営責任者)であり創設者でもあるスティーブ・ジョブスは 1954年生まれで、私と同い年である。
 
スティーブ・ジョブスは小柄な女性を好む。
 
なぜわかるかというと、私の好みがそうであるからだ。小柄な女性が好きな男というのは、長方形より正方形、直方体より立方体が好きである。そういう男が物作りに口を差し挟むと、長い物は短くしたいし、角張ったものは丸めたがる。女性の姿態から工業製品の形状まで、手のひらに載せてころころと転がして、弄ぶのに“心地よいカタチ”が好きなのである。本人はそれが愛らしいと思っているのだ。
Apple Computer を追い出されて設立した NeXT 社でも、復帰した Apple Computer 社でも直方体はキューブ状にし、キューブ状のものは丸めたがり、ジョブスの作るものはすなわち、どれも私好みの物なのである。
 
IBM 社とモトローラ社が共同開発した第3世代 PowerPC プロセッサ G3(Generation 3)を搭載したミドル・タワー型マシン、Power Macintosh G3 MT 266/ZIP が発売されたのは、1997年のことだ。Power Macintosh 8600/200/ZIP に別段不満は持っていなかったのだが、周りの連中がうるさく「ジーさんを買った!」と頻りに自慢するのが気になっていた。
 
「爺さんを買ってどうする!」
 
と、冷ややかに聞き流していたのだが、Power Macintosh G3 MT 266/ZIP を見て一目惚れしてしまった。Power Macintosh 8600/200/ZIP と瓜二つの美形なのに、一段背が低かったのである。
しかも、小さいくせに性能の良い女性で、懐かしの言葉で言えば“トランジスタ・グラマー”なのだ。ジョブスは大阪弁で言った「背ーーが低いは百難隠しまっせ」。私は標準語で言う「小さなじゃじゃ馬慣らしは楽しい」。
 
今は昔、Apple 家には MT 266 という姉と 8600 という妹の姉妹がいました。8600 はすらりとしたしとやかな娘で求婚者があとを絶ちません。一方、“トランジスタ・グラマー”の姉 MT 266 は、とんでもないおてんばで、将来を案じた父は姉の嫁ぎ先が決まらなければ妹の結婚も許さないというのです。そこへやってきたペトルーキオ、性能さえ良ければ苦労も辞さぬと早速のじゃじゃうま慣らしを始めます。金に糸目をつけず SDRAM DIMM を差しまくり、PCI バスに高速 SCSI カードを差し、OS 8.6 の登場を待って USB 増設カード、IEEE1394(愛トリプルいい1394)増設カードを差し、メディアを吸い込んだまま抜けなくなっちゃうヤクザな Zip ドライブを除去してあげ、高速大容量ハードディスクをぶち込み、フロントベゼルで化粧直しし、と誠心誠意渾身の愛を注ぎ、MT 266 は乗りやすいメス馬、じゃなかった、理想の女性となって我が家の永久保存 Macintosh になりました、とさ。めでたしめでたし。(William Shakespeare原作『じゃじゃ馬ならし』The Taming of the Shrewより)

写真は私好みのサボテン。※G3 MT 266/ZIP 発売当時ジョブスは AppleComputer に復帰していない。
Power Macintosh G3 MT 266/ZIP:CPU=PowerPC G3/266MHz、最大メモリ搭載容量=SDRAM DIMM 168 ピンで最大384MB まで拡張可能