電脳六義園通信所管理人 石原雅彦の日日抄

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三好春樹主催・生活とリハビリ研究所サイトの管理日誌です。

【今月の栞】
 それからひと月もたって、B教授の形見だと言ってN国領事から自分の所へ送って来たのは大きな鋳銅製の虎の置き物であった。N教授の所へは同じ鋳物の象が来たそうである。たぶんみやげにでもするつもりでB教授が箱根あたりの売店で買い込んであったものかと思われた。せっかくの形見ではあるがどうも自分の趣味に合わないので、押し入れの中にしまい込んだままに年を経た。大掃除のときなどに縁側に取り出されているこの銅の虎を見るたびに当時の記憶が繰り返される。大掃除の時季がちょうどこの思い出の時候に相当するのである。
 S軒のB教授の部屋の入り口の内側の柱に土佐特産の尾長鶏の着色写真をあしらった柱暦のようなものが掛けてあった。それも宮の下あたりで買ったものらしかったが、教授のなくなった日、室のボーイが自分にこの尾長鶏を指さしながら「このお客さんは、いつも、世の中にこのくらい悲惨なものはないと言っていましたよ」と意味ありげに繰り返して話していた。しかしなぜ尾長鶏がそんなに悲惨なものとB教授に思われたか、これが今日までもどうしても解けない不思議ななぞとして自分の胸にしまい込まれている。
 ボーイについて思い出したことがもう一つある。やはりこの事変の日に刑事たちが引き上げて行ったあとで、ボーイが二三人で教授のピストルを持ち出して室の前の庭におりた。そうして庭のすぐ横手の崖一面に茂ったつつじの中へそのピストルの弾をぽんぽん打ち込んで、何かおもしろそうに話しながらげらげら笑っていた。つつじはもうすっかり散ったあとであったが、ほんの少しばかりところどころに茶褐色に枯れちぢれた花弁のなごりがくっついていたことと、初夏の日ざしがボーイのまっ白な給仕服に照り輝き、それがなんとも言えないはかない空虚な絶望的なものの象徴のように感ぜられたことを思い出すのである。

寺田寅彦『B教授の死』より

 

 


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