電脳六義園通信所管理人 石原雅彦の日日抄

2009/01
2008/12
2008/11
2008/10
2008/09
2008/08
2008/07
2008/06
2008/05
2008/04
2008/03
2008/02
2008/01
2007/12
2007/11
2007/10
2007/09
2007/08
2007/07
2007/06
2007/05
2007/04
2007/03
2007/02
2007/01
2006/12
2006/11
2006/10
2006/09
2006/08
2006/07
2006/06
2006/05
2006/04
2006/03
2006/02
2006/01
2005/12
2005/11
2005/10
2005/09
2005/08
2005/07
2005/06
2005/05
2005/04
2005/03
2005/02
2005/01
2004/12
2004/11
2004/10
2004/09
2004/08
2004/07
2004/06
2004/05
2004/04
2004/03
2004/02
2004/01
2003/12
2003/11
2003/10
2003/09
2003/08
2003/07
2003/06
2003/05
2003/04
2003/03
2003/02
2003/01
2002/12
2002/11
2002/10
2002/09

2002/08
2002/07
2002/06
2002/05
2002/04
2002/03
2002/02
2002/01
2001/12
2001/11
2001/10
2001/09

2001/08
2001/07
2001/06
2001/05
2001/04
2001/03
2001/02
2001/01
2000/12
2000/11
2000/10
2000/09
2000/08
2000/07
2000/06
2000/05
2000/04
2000/03
2000/02
2000/01
1999/12
1999/11
1999/10
1999/10以前



三好春樹主催・生活とリハビリ研究所サイトの管理日誌です。

【今月の栞】
 木枯らしの夜おそく神保町を歩いていたら、版画と額縁を並べた露店の片すみに立てかけた一枚の彩色石版が目についた。青衣の西洋少女が合掌して上目に聖母像を見守る半身像である。これを見ると同時にある古いなつかしい記憶が一時に火をつけたようによみがえって来た。木枯らしにまたたく街路の彩燈の錦の中にさまざまの幻影が浮かびまた消えるような気がするのであった。
 十四五歳のころであったかと思う。そのころ田舎では珍しかった舶来の彩色石版の美しさにひどく心酔したものであった。われわれはそれを「油絵」と呼んでいたが、ほんとうの油絵というものはもちろんまだ見た事がなかったのである。この版画の油絵はたしかに一つの天啓、未知の世界から使者として一人の田舎少年の柴の戸ぼそにおとずれたようなものであったらしい。
 当時は町の夜店に「のぞきからくり」がまだ幅をきかせていた時代である。小栗判官、頼光の大江山鬼退治、阿波の鳴戸、三荘太夫の鋸引き、そういったようなものの陰惨にグロテスクな映画がおびえた空想の闇に浮き上がり、しゃがれ声をふりしぼるからくり師の歌がカンテラのすすとともに乱れ合っていたころの話である。そうして東京みやげの「江戸絵」を染めたアニリン色素のなまなましい彩色がまだ柔らかい網膜を残忍にただらせていたころの事である。こういうものに比べて見たときに、このいわゆる「油絵」の温雅で明媚な色彩はたしかに驚くべき発見であり啓示でなければならなかった。遠い美しい夢の天国が夕ばえの雲のかなたからさし招いているようなものであった。

寺田寅彦『青衣童女像』より


  2007年11月01日(木曜日)の日記
■風呂敷とコンテナ
  2007年11月02日(金曜日)の日記
■鳥と魚の夜
  2007年11月03日(土曜日)の日記
■アジサバサンマ
  2007年11月04日(日曜日)の日記
■mylo―僕の My life offline
  2007年11月05日(月曜日)の日記
■近所を歩けば近所にも秋
  2007年11月06日(火曜日)の日記
■蜘蛛の糸
  2007年11月07日(水曜日)の日記
■情報
  2007年11月08日(木曜日)の日記
■意味と遊ぶ
  2007年11月11日(日曜日)の日記
■アイラブ浜田
  2007年11月12日(月曜日)の日記
■柿くへば
  2007年11月13日(火曜日)の日記
■町の肌ざわり
  2007年11月14日(水曜日)の日記
■三島駅寸景
  2007年11月15日(木曜日)の日記
■教会の常識
  2007年11月16日(金曜日)の日記
■一とー(いちとおんびき)
  2007年11月17日(土曜日)の日記
■国道149号終点
  2007年11月18日(日曜日)の日記
■赤紙仁王の冬
  2007年11月19日(月曜日)の日記
■音のない空
  2007年11月20日(火曜日)の日記
■羽織る
  2007年11月21日(水曜日)の日記
■楽しいそり遊び
  2007年11月22日(木曜日)の日記
■くすぐったい屋号
  2007年11月25日(日曜日)の日記
■ポケットのマッチ
  2007年11月26日(月曜日)の日記
■早起き佐久間町
  2007年11月27日(火曜日)の日記
■東神田三丁目
  2007年11月28日(水曜日)の日記
■お口の恋人と左官
  2007年11月29日(木曜日)の日記
■レパードの朝
  2007年11月30日(金曜日)の日記
■サンドイッチと1.5の謎
   
   
     
     
     

 


電脳六義園サイトへのリンクは下のバナーをご利用ください。